RADWIMPS4 〜おかずのごはん〜

RADWIMPS4~おかずのごはん~

RADWIMPS4~おかずのごはん~

おかずのごはんってなんだという疑問は置いておいて。RADWIMPS渾身の4thアルバム。


このアルバムは、歌詞をまとめて読んでみると分かるのだが、一つのきれいな流れをもっている。つまるところ、無理やりまとめて言えば、主人公が彼女から振られてしまってから、立ち直るまでを描いたアルバムだ。


ふたりごと」での愛のささやきから、
「ギミギミック」で一度、自分の存在すら含むもろもろすべてを疑って始まり、
その後は肯定したり、また否定したりを繰り返して、
「バグッバイ」で自分の存在理由を祈って終わる。


それにしても、このアルバムは、12曲ほぼすべてが野田君の個人的な恋(失恋)について歌われている。そこでの痛いぐらいの「君」の肯定は、少し怖ささえ覚えてしまうくらいだ。「me me she」の中にこんなフレーズがある。

僕が例えば他の人と結ばれたとして
二人の間に命が宿ったとして
その中にもきっと 君の遺伝子もそっと
まぎれこんでいるだろう

こんなことを歌われたら、結ばれた他の誰かが、離れていってしまうんじゃないか。でも、きっとこの主人公は、そんなことすら考えられないぐらい、君しか見えていなくて、失ったものに意味を付けようと必死になっている。痛いくらいの一途な愛。


僕がこのアルバムに惹かれるのは、もちろん歌詞のせいだけではない。むしろ、今までのアルバムでこっそり不満があった音楽性に、今回かなり惹かれた。


RADWIMPSの音楽性。それは、いろいろなジャンルのいろいろなアイディアを、多い時は一つの曲に何個も、思いついただけ詰め込まずにはいられないというところに特徴がある。


「ギミギミック」ではレッチリばりのスラップベースが引っ張っていくし、「有心論」ではいきなりラップが聞こえてくるし、「いいんですか?」ではレゲェと思えば、「バグッバイ」ではチェロが哀愁を漂わせる。


これは人をひきつける要素が増える反面、人が好きではない要素も増える諸刃の剣だ。折角の美しいメロディが、一回でできただけでもう違う展開に行ってしまった曲を聞いたときは、かなりもどかしかったことを覚えている。でもそういった、言い方は悪いが、「不発のアイディア」が今回かなり減ったと思う。もともと、歌詞とメロディだけで十分勝負できるバンドだ。たくさんちりばめられたそのアイディアが、そのメロディの足を引っ張るのではなく、引き立てるとしたら…いよいよRADWIMPSはすごいことになる。


有名になったとはいえ、まだまだ知らない人も多いこのバンド。もっといろんな人に教えたいな。きっと、好きになるよ。

セツナレンサ

セツナレンサ

セツナレンサ

最近英語詞の曲を交えるバンドが増えている気がします(ELLEGARDENストレイテナーなど)。本当は聞いてもらいたいんだけど、日本語にするとどうしても刺激が強くなりすぎるから英語詞にする…そんな理由なんでしょうか。この「セツナレンサ」も、英語詞メインの曲になっている上に、歌詞カードに訳詞がついていません。となるとどうしても気になる僕。辞書片手に訳を考えてみたらとても面白い事に気付きました。


ここで歌われているのはどうやら「伝えること」への葛藤。どうして自分がこんな心の中をいちいち伝えなくちゃいけないんだという、アーティストとしてはあまりに人間的で、弱い心情がこっそり吐露されているんです。「伝えたくない」ということを伝えるのに、日本人には直接伝わらない英語詞を使う。なんだか凄く面白く、かつしっくりくるアイディアだと思います。


そんな「セツナレンサ」は、格好いい英語詞のメロディと、哀愁ただよう日本語詞のメロディが強引気味にくっつけられた、とてもRADWIMPSらしい曲。僕は英語詞の部分が特に好きです。また「バイマイサイ」はいい意味で分裂症気味なA面と違い、アコースティックで優しい曲。野田さんの声は、柔らかくて優しいので、こういう曲もすごくしっくりきます。


アルバムが楽しみだ。

Endtroducing...

Endtroducing (Dlx) (Dig) (Spkg)

Endtroducing (Dlx) (Dig) (Spkg)

3rdが賛否両論の(少し否が多いか)、DJ SHADOW。その1stアルバム。
なんと全ての音がサンプリングによって作られているアルバムで、ギネスブックにも載っています。


どうしてもサンプリングで作られたアルバムと言われると、素人考えでは「リズム主体でそれに上モノが少しかぶさる」ものぐらいしか想像できませんが、2曲目「Building Steam With A Grain Of Salt」からその予想は覆されます。荘厳なピアノが聞こえてきたかと思うと、そこに幾重にも重なるギターやベースやシンセ達。それに音の欠片を使ったコラージュという印象はなく、継ぎ目の見えない一つの絵として完成しています。リズムももちろん素晴らしいんですが、それ以上に、その上をいろんな音が通り過ぎ、最後はその音の欠片達が一度に重なる恍惚感。ただただ酔いしれるしかありませんでした。


このアルバムには、ヴォーカルもラップもほぼないに近いです。けれど、冷たくて格好いいリズムに乗る、時にジャズっぽく時にROCKっぽい、彼が膨大なレコードから探り当てた音の欠片。それらが生み出す構築美。サンプリングで全てが作られたと聞くと、どうしても僕なんかは身構えてしまいますが、この作品は音楽を作る立場の人が聞いて参考にするような玄人的なアルバムではなく、開かれた格好よさを持ち万人にアピールできる、ポップなアルバムだと思います。


3rdや、テリヤキボーイズで彼の名前を知った人、ぜひこれを聞いてください。
彼の出世作であり、音楽への愛の結晶であり、最高傑作だと思います。

A Weekend In The City

1stアルバムが大成功したバンドにとって、2ndは大きな勝負だ。同じ路線で行けば、1stにあった衝撃は薄まり二番煎じと言われ、路線変更すれば、前の良さがなくなった失敗作といわれる。先行シングル「I Still Remember」を試聴した時、1stの特徴であった音の隙間が埋められていて、僕はがっかりした。ああ、後者の「路線変更」を選んで失敗してしまったのか。


その考えはアルバムを聞いて吹き飛ばされることになる。
始めに言い切っておきたい。このアルバムは1stで大成功したバンドに類まれな、傑作2ndだと。


これまでのBloc Partyは、ある一音で空間を切り裂く、静と動で見せることが得意なバンドだった。しかし、この作品で見られるのは、少しずつ絵の具を重ねて油絵を描くような構築美。少しずつ積み重なっていく音が、ドラマチックに、かつアーティスティックに曲を動かしている。


そして、ケリーの声は、ハイトーンヴォイスにありがちな、憂いに満ちたそれではなく、まるでヘッドフォンからつばが飛んできそうな臨場感、緊迫感を持っていて、それがこのアルバムをよりヘビーでシリアスな雰囲気に色づけている。それにともない歌詞も直接的なメッセージを叩きつける。まるで目の前に世界の危機をたたきつけられたような…こんなにも冷たくて、こんなにも格好いい。


祈るようなイントロから怒涛の展開「Song For Clay(Disappear Here)」、
複雑で発明的なギターリフが響く「Hunting For Witches」、
Mogwaiを倍速でかけて歌をつけたような「Waiting For The 7.18」、
新興宗教的なリズム&コーラス、ノイズまがいのギターソロに痺れる「The Player」、


などの展開が激しい前半で惹き付け、


もっとも重く響く「Where Is Home?」、
アルバムの流れで聞くとその優しさに救われる「I Still Remember」、
その愛のある日常と、かき鳴らされるギターに涙を誘われる「Sunday」、


などの後半を聞かせる。アルバムの流れも素晴らしい。


確かに1stの発明的な音と比べれば、この2ndの手法はどこかで聞いたことがあるものかもしれない。でも、これほどまでに格好いい音を届けられて、一体どんな文句が付けられるというのだろう。バンドサウンドとエレクトロの融合。言葉にするとチープだし、今や珍しくもない手法だが、この迫力と、このドラマ性と、この美しさを表現できたバンドがどれだけいたか。


もう一度言う、このアルバムは傑作2ndだ。
Bloc Partyの踏み出した一歩に、迷いはない。

SILENT ALARM

Silent Alarm

Silent Alarm

さめて、さめて、さめている。
冷めて、覚めて、醒めている。
UKROCKを切り裂く、bloc partyのデビューアルバム。


彼らの特徴と言えば、やはりその音の隙間、だと思う。かなり大きめに録音されたドラムに、断片的なギターとベース、そしてハイトーンなヴォーカルが隙間を埋めきることなく絶妙に絡む。そして、その音の隙間を切り裂くように挿入される冷たいギターアルペジオ。この展開は、もはや発明と言って良いのでないのだろうか。


とりあえず、「Helicopter」を聞いてみて欲しい。


曲の後半、ノイズのようにカリカリなるギターの向こう、遠くでクリーンなギターアルペジオが響く。それは少しずつ空間を埋めるように、曲全体を支配する。僕がこのアルバムを聞いていてもっとも高揚する瞬間。「ギター音の挿入」、たったそれだけがこんなに美しく、こんなにドラマチックな瞬間なんて、他のバンドでは、ありえるだろうか?


しかも、その冷たいギターはバラードにもしても映えるし、メロディも美しい。曲展開も上に揚げたようなものから、丁寧に音を重ねて盛り上げるようなものまで多彩。新人の荒削な雰囲気を持ちつつも、ヘッドフォンにおける音の振り分けが丁寧で、実は繊細であり緻密。実に三次元的に音が配置されている。


1stにしてこれだけ完成している、その事実だけが怖い、そんなアルバム。
「静かなサイレン」、そんなギターが鳴る時、それは新しいROCKの始まりを告げる。